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NEC未来創造会議

Pre-Forum プレ有識者会議 REVIEW
COVID-19で意志共鳴型社会を問い直す

企業は社会価値創造を育む「場」になる
──個人の力を引き出すプラットフォームの可能性

テクノロジーは人を“エンハンス”できるのか?

松島:
リテラシーを高めていかないと、技術だけが進化したところで社会は変わらない、と。思えばNEC未来創造会議ではそうした問題意識があったからこそ「意志共鳴型社会」というビジョンを提示するに至ったわけですよね。一方では、アメリカの政治状況やBREXITの例を見てもわかるとおり、インターネットによる分断はどんどん大きくなっている。そんな状況において大きな社会課題や環境問題に取り組むなかで、これから個人と社会はどのようにつながっていけるでしょうか。

江村:
まず大事なのは、テクノロジーの使い方を変えることでしょう。これまではテクノロジーで人間のできることを代替して便利な生活を実現することが目指されていたけれど、人間の能力をより引き出してくれるように、人間をエンハンスするようにテクノロジーを使わなければ人が豊かにいきていけるようにはならない。

松島:
本日の冒頭でICTによる分散化が新しい価値を生むという話がありましたが、遠藤さんはどうすればテクノロジーによって人をエンハンスしていけるとお考えでしょうか。

遠藤:
いま若い人の能力がすごく高いと言われていて、とくにスポーツなどでは10代の若い方々の活躍がすごいですよね。ただ、実際はその能力を支えられるプラットフォームがまだ整備されていないように思うんです。きちんと能力を発揮させてあげられる場がない。だからこそ全体最適を行なっていく過程で、一人ひとりをエンハンスさせていかねばならない。その点、最近は教育にICTが取り入れられることで分散的に個々人が自分の能力を高めていけるようになってきたと思います。これまでの教育はマスへの効果を重視するがゆえに、全体に合わせるべく学習意欲の高い学生を抑制するようなことも少なくなかった。でも、いまはより個人が主体となって教育を組み直していけるようになっているし、これからは一人ひとりの力を引き出していくプラットフォームをICTがつくっていけるのではと思っています。そうなると工学部だから数学だけ勉強します、ということでもなく、領域を超えていく人も増えていくはず。事実、最近は医者でありエンジニアみたいな人もいますよね。領域をひとつに絞ってしまうと、人々が共鳴できる範囲も狭まってしまうと思うんです。

越境とインクルージョン

松島:
越境をICTによってサポートしていく。

遠藤:
そうですね。リベラルアーツの重要性はもうだいぶ前から主張されていますが、それがより一層重要になってきていると思います。従来は大学の面積が決まっているから学生の数を制限するために大学受験を行なっていたけれど、リモート教育がもっと広まれば大学受験すらなくなるかもしれないし、学びのあり方が変わっていくはず。何をどこで学ぶかはすべて個人が決められるようになるし、その機会も公平に提供されていくようになるでしょう。これが共鳴型社会の本当の基盤になっていく気がしています。

松島:
一人ひとりが能力を発揮するという点では、インクルージョンの観点も重要ですよね。たとえばいまの社会の仕組みのなかでは障害をもった人が本来の能力を発揮しづらかったりします。

遠藤:
少なくともリモート化によって選択肢はものすごく増えますよね。わざわざ東京に来なくても一流の先生から学べるようになるし、どこでも最先端の教育を受けられるようになる。それはこれまで以上に多様な人がチャンスを得られることでもあります。全体最適を進めるうえではマルチな人間が必要になると思っていて、あれもできるこれもできるという人が全体最適をつくりあげるリーダーになれるんじゃないかと思う。同時に価値を生み出すプロフェッショナルであるところの企業はパーパスを明示してリーダーになっていかないといけない。

松島:
遠藤さんのおっしゃっているマルチな人間が増えていくことで、意志共鳴型社会も進展していくかもしれないですね。

「場」としての企業

松島:
意思共鳴型社会の基盤について、江村さんはいかがお考えですか?

江村:
ICTによってプラットフォームをつくっていく重要性を強く感じましたね。マルチな能力を身につけていくために人は学校と関係なくずっと勉強しつづけていくと思うんです。人々が子どもから高齢者になるまでスキルを磨いていくとすると、そのスキルを相互に比較できる基準が整理されているといいなと思います。そういった基準があるとコラボレーションも生まれやすい気がしますから。一方で、企業について考えると人事制度もひとつのプラットフォームだと思うんですが、社員のあり方が自由になっていくのに合わせて会社というプラットフォームも変わらなければいけない。あるいはマルチな人間という意味では、金子みすゞの「みんなちがって、みんないい」という言葉にこそ本質があると思っています。一人ひとりが異なる存在で、異なっているからこそ集団全体がよりよいものになっていくことが望ましい。これまでの日本は均一にみんなが育っていくことが重視されていたので、意識改革を起こさなければいけないでしょうね。NECとしてもこうした変革を後押ししていかなければいけないなと思っています。

遠藤:
わたし自身は、NECって価値創造の場だと思っているんです。つまり「場」を提供しているということ。だからそこで一人ひとりが社会を変えられるような価値を生み出せる場にしたいし、働いている人々が自分の力を発揮したくなるような場でなければいけないなと思います。