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NEC未来創造会議

Pre-Forum プレ有識者会議 REVIEW
COVID-19で意志共鳴型社会を問い直す

「全体最適」はいかに可能か?
──情報社会からデータ社会、体験社会への移行が社会へもたらすもの

情報社会からデータ社会、その先の体験社会へ

松島:
こうしたプラットフォームを考えるうえで、これからの大企業は社会のなかでいかなる役割を果たしていくのでしょうか。とくにNECさんは今後どうされるのかなと。

江村:
かつてNECはものづくりの会社で、先ほどの4象限でいえば左下の「安定・統制」と「成長重視」の価値観に重きを置いていました。しかしICTがどんどん発展することで、わたしたちのもつ力がこれまで以上に広い範囲へ応用できることがわかってきた。一方で、NECだけですべてのことができるわけではないのも事実で、これからはコラボレーションが重要になっていくのだと思っています。社会の持続性をつくっていくために、大企業だからこそできるコラボレーションを探っていきたいですね。

松島:
成長と持続性を同時に追求するという点で、遠藤さんはSDGsをNECの文化にするとこれまでもおっしゃってきました。

遠藤:
やはり人間社会の持続性と経済活動の継続性が重要ですね。ひとつのプロジェクトを実施して終わるだけでは会社である意味がありませんから。環境が変わっていくなかでも価値を創造する力をもちつづけるのが会社の役目であって。先ほどの話に戻りますが、これからの企業は、持続性に貢献できないかぎり社会から支持されないので利益を生み出せない。社会の持続性を高めることと経済活動を続けることを一体化させることが重要だと思っています。とくにいまは現代の政治がポピュリズムに走り短期的な成果をあげることに注力している分、経済はよりロングタームで答えを出すことが重要だし、より長期的な問題解決を行なうのが企業の役割だと思っています。

『WIRED』日本版編集長 松島 倫明 氏

企業はいかなるインフラをつくるのか

松島:
近年はかつて国が行なっていたような社会的なインフラ整備をICT企業が担うケースが世界中で増えていますが、長期的に社会を変えていくうえでは企業はインフラにおいても価値をつくっていくものなのでしょうか。

遠藤:
いま世界が情報社会からデータ社会に移ろうとしていることで、インフラのあり方も変わってきています。かつては類似性のあるデータから演繹的にそれが何を意味しているのか分析することで価値を生んでいたけれど、一方では捨てられてしまうデータも多かったし、価値を生み出せる領域はその都度限定的なものだった。しかし、データ社会は膨大な量のデータを使うことで社会全体に影響を与えるような価値を生み出せる。データ分析によって「風が吹けば桶屋が儲かる」のような複雑で広範囲に影響を及ぼす価値を生み出せるんですよね。つまり部分最適だけでなく全体最適が行えるようになるわけですが、ただデータやツールがあるだけでは何もできなくて、どんな価値をつくるのか、どのように社会を変えるのかに関するコンセンサスが求められるようになる。それこそが、NEC未来創造会議が掲げている「意志共鳴」なのだと思っています。

江村:
全体最適によって社会を大きく変えていくうえでは、都度コンセンサスを形成しながらでないと進められないですからね。まさにいまこそ意志共鳴が重要になっている。あるいはこれまでの部分最適が概して効率化を偏重していたことも問題かもしれません。たとえばいまエッセンシャルワーカーの重要性が見直されていますが、じつは彼/彼女らの仕事はICTで効率が上がったかもしれないけれど、根本的な構造はほとんど変わっていない。なので、医療や物流など大きな括りで産業のあり方を変化させていくようなところにICTを活用していくことも重要です。

NEC 取締役 会長 遠藤 信博

コモングラウンドはどこへ

松島:
ありがとうございます。そもそも人間の思考には制約があるので、部分最適に取り組むことはできても全体最適が非常に苦手ですよね。だからこそデジタルテクノロジーによる全体最適には大きな可能性がある。昨年のNEC未来創造会議で建築家の豊田啓介さんが提示した、人間とICTがコミュニケーションできる「コモングラウンド」という概念にもつながる話なのだと思います。人やモノがリアルタイムにセンシングされることでつくられる情報の共有基盤がコモングラウンドだとされていますが、これはまさにNECさんが取り組もうとしている全体最適によって実現するものかもしれません。

江村:
そのとおりですね。どんなところにコモングラウンドをつくるかがポイントだと思います。ともするとサイバー空間って自分の好きなところに閉じこもって社会を見なくなってしまうような状況を生みがちです。事実、高い感染リスクのなかでいま働いてくださっているエッセンシャルワーカーの人々の存在にわたしたちはこれまで目を向けずに部分最適をすることを容認してしまっていた。リアルな社会をきちんと認識し、すべてを包含してコモングラウンドをつくることが重要なので、ただ技術的に環境を整えるだけではなくて人々の社会に対するリテラシーを上げていかなければいけない。遠藤さんが先ほど教育の例を出されたように、いまICTを使った教育がうまくいきつつあることがわかってきたので、リテラシーを上げていく仕組みのデザインがわたしたちにとって次のチャレンジになる気がしています。