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NEC未来創造会議

Pre-Forum プレ有識者会議 REVIEW
COVID-19で意志共鳴型社会を問い直す

持続するからこそ、成長できる
──2050年の社会に向けてICTができること

NECが2050年の豊かな社会の実現にむけて始動したプロジェクト「NEC未来創造会議」。2017年に始まったこのプロジェクトは、テクノロジーや人の意識といったさまざまな観点から国内外の有識者とどんな世界を目指していくべきなのか議論を行なってきた。

2018年度のNEC未来創造会議は2050年の社会像として「意志共鳴型社会」というビジョンを提示し、昨年度からはさまざまなステークホルダーとの共創活動など社会実装に向けた取り組みも進めている。

本プロジェクトは今年度も議論を継続していくが、一方ではいまなお世界中で猛威を振るうCOVID-19の感染拡大によって、社会のあり方がそれ以前と大きく変わってしまったのも事実だ。グローバルな資本主義経済によって成り立っていた世界は、システムの面においても個々人の意識の面においても大きな見直しを迫られており、新たな生活や思考の様式を指す「New Normal」なる言葉も生まれている。

今年度のNEC未来創造会議は、まずこれからも人間社会に大きな影響を及ぼしつづけることが予想されるCOVID-19を取り上げ、「COVID-19が社会に本質的に示したものは何か? 2050年に社会や企業、人はどう変わるか?」というテーマのもとプレセッションを開催。昨年も本プロジェクトに参加した『WIRED』日本版編集長・松島倫明によるモデレーションのもと、NEC取締役会長の遠藤信博とNECフェローの江村克己による議論が繰り広げられた。

プレ有識者会議参加メンバー

  • 『WIRED』日本版編集長

    松島 倫明 氏

  • NEC 取締役 会長

    遠藤 信博

  • NEC フェロー

    江村 克己

持続性をもった成長の時代

松島:
今回の議論を始めるにあたり、NECさんは「2050年の社会エコシステムパレット」として「変化・自律/安定・統制」を縦軸に、「成長重視/持続性重視」を横軸にとったマトリクスをつくられています。企業や組織のスタンスによってこの4象限のどこに置かれるかが変わるわけですが、これまでは「安定・統制」と「成長重視」を志向する営利企業が社会の大部分を構成していたものの、2050年に向けてその構成も変わっていくのかもしれません。まずはこのエコシステムパレットをもとに、COVID-19が社会にもたらした変化や2050年までつづく射程の深い変化を探っていけたらと思っています。今回パレットに配された自律性や持続性というキーワードについては、遠藤さんもかねてから強く意識されていますよね。

2050年の社会エコシステムパレット

遠藤:
今回の4象限では「成長」と「持続性」、「自律」と「制御」を対置させていますが、実際は相反するものではなく両者が合わさることで初めて大きな価値が生まれるのだと思っています。持続性をもった成長こそが重要だし、自律しながら分散的に制御できるほうが望ましいですからね。たしかに特徴だけ見ればこれらの要素は相反しているのかもしれないけれど、実際は両者を同時に動かすことで新たな価値が生まれるのではないかと。

松島:
江村さんは今回の軸についてどうお考えですか?

江村:
軸の両端を対比したいわけではなくて、問題設定をより明確にするために対置しているのかなと。むしろ、これまでの社会がもっていた評価軸ではこの要素が両立しないことになっていたことこそに問題があるわけです。この軸をベースに議論を進めることで、そもそも「成長」や「持続性」が一体どんなものを想定していたのかについても明確になっていくように思います。

「リモート」が変えたもの

松島:
これまでのNEC未来創造会議でも、数字や経済合理性以外の評価軸をもって物事を捉える重要性が指摘されていましたし、成長をうまく評価するためのKPIをぼくたちはまだもっていないのかもしれません。

遠藤:
成長をどう定義づけるのかが重要ですね。本日のテーマにもなっているCOVID-19を通じてその感覚にも変化が生じているかもしれません。たとえばICTってリアルタイム性/ダイナミック性/リモート性に価値があるんですが、今回時間や空間の制約から解放することに一役買いました。これは成長に対しても大きな変化をもたらしていて、たとえば大学の授業は価値のあり方が変わってしまった。

松島:
といいますと?

遠藤:
授業が分散化したことで集合することに価値がなくなった結果、価値をつくる主体が講師ではなく受講者側になったと思うんです。もはや時間割にもそこまで縛られず授業を選び、何を学ぶのか考えるようになってきた。だからどこの大学を卒業したかよりそこで学んできたことの方により焦点があてられるようになってきた。これは企業にとっても同じで、何か新しいプロジェクトを立ち上げるときにNEC自体が主体性をもってすべてを管理するのではなく、外部の人を交えながら働いていくようになるでしょうし。

江村:
一方で、リモートは本来もっと大きなポテンシャルをもっているはずなのに、ただ「便利」なものとして受け取られるだけで止まっている気もします。実際は「便利」という言葉の裏でこれまでの制約をいくつも突破しているわけです。たとえば遠藤さんが提示した時空間の制約もそうですが、組織や人間の制約を超えているのかもしれない。過去を振り返れば産業革命が空間の制約を取り除き、情報革命が時間の制約を取り除いたわけで、これから訪れるSociety5.0と呼ばれる社会がいったい何を取り除くのか、COVID-19を通じて考えていく必要がありそうです。そしてそれは、わたしたちがどんな社会を目指すのか、その本質を考えることでもある。

NECフェロー 江村 克己

自己実現を満たすためのプラットフォーム

松島:
COVID-19によって、まさにいま「本質」が問われていますね。いままで信じていた「安定」や「成長」という概念があっけなく崩れてしまって、新たな価値をつくることが求められている。

遠藤:
COVID-19によって分散的に価値を生む方向に進んだことで、これまで提供できなかった価値が提供できる可能性がでてきています。たとえばマズローの欲求段階説を考えると、これまでは下位の生理的欲求しか満たせなかったけれど、ICTが時空間の制約をなくすことで上位に位置付けられていた自己実現の欲求を叶えやすくなったんじゃないかと。そうすると国が自律しやすくなるので、持続性も生まれてくる。これはNEC未来創造会議が提唱する意識共鳴型社会とも関係していて、生理的欲求を満たしてくれるプラットフォームだけでは、人々の共鳴は引き起こせないと思うんです。でも自己実現を促進できるプラットフォームができあがれば、それは地球全体に共鳴を呼ぶベースとなるものになりうると思います。

松島:
国がつくるプラットフォームとは、衣食住のような生理的欲求を満たすレイヤーだけを考えていても駄目だということですね。国はむしろ、自己実現のような欲求を満たして豊かさを生むようなプラットフォームをつくらなければいけないのだと。