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NEC未来創造会議

これからの社会、これからの技術

NECが2017年度から始めたプロジェクト「NEC未来創造会議」。2050年の未来を考えるべく始まったこのプロジェクトは、領域を問わずさまざまな有識者を招きながら毎年議論を重ねてきた。議論のもとで新たな社会を構想するビジョンやそのための共創活動も始動するなかで、本プロジェクトを牽引してきたNECフェローの江村克己はいまこそ「技術」のあり方を考えるべきだと語る。長年にわたり最先端で技術の進化に寄り添ってきた江村が綴る、これからの社会のためのこれからの技術とは。

#1 いま「技術」を考えなおすことをめぐって

変わりゆく技術と社会の関係性

私たちが目指すべきこれからの社会を考えるためのプロジェクト「NEC未来創造会議」が、今年で4年目を迎えました。2017年の始動時に発表されたNEC 代表取締役 執行役員社長 兼 CEO新野のメッセージに「今日の技術の進歩がもたらす社会変化は、複雑で多様な可能性と課題を私たちに提起しています」とあるとおり、人の幸福のあり方や新しい産業の形、技術と人間の関係性など、このプロジェクトはさまざまな問題に取り組もうとしてきました。毎年多様な領域から有識者を招いて会議を開き、議論が年々深まっています。昨年からはパートナーのみなさまと共創セッションを開くなど、単に議論するだけでなく実践も始まりつつあります。

振り返ってみれば、NECはかねてから「技術」と「社会」の関係性について考えてきました。1977年に小林宏治(当時会長)が提唱した「C&C(Computer & Communications)」という概念も、情報通信技術によって21世紀初めには地球上の人が誰とでも/いつでも/どこでもつながる社会をつくることを目標に掲げたものです。C&Cがコンピューティングや通信技術により人に新たな価値を提供することを考えていたとすれば、NEC未来創造会議はAI(人工知能)を含むデジタル技術の進展を受けて、人が豊かに生きる社会を考えていくものと考えています。

技術の進化は非常に激しいため、技術と社会を考えるための議論の進め方も大きく変わりつつあります。もちろんAIは重要な論点のひとつですが、いまもなお世界中で拡大が続くCOVID-19や年々深刻化する環境問題を意識すると、NECがこれまで専門としてきた「デジタル技術」以外にも目を向けることが必要になっています。地球温暖化に対応し持続可能な社会をつくっていくためには、生態系全体を意識しなければなりません。NEC未来創造会議でも、数多くの有識者の方から「この世界のなかで生きているのは人間だけではない」と指摘をいただいています。NECが目指している方向性そのものは変わりませんが、もっとスコープを広げていくことが必要です。今年改定した「NEC Way」には、まさにこうした意識が表れています。そこに掲げている「誰もが人間性を十分に発揮できる持続可能な社会の実現」が、いま私たちの目指すべきところです。NEC未来創造会議は、より長い時間軸で検討を進めていますが、その目指すところは同じであると考えています。

NECがダイバーシティ&インクルージョンの実現を掲げていることにもつながりますが、将来を描く上では多様な視点から考えることが必須です。NEC未来創造会議でもSF作家や僧侶、文化人類学者などさまざまな方を有識者としてお招きしてきました。私自身、有識者の方々との会話を通じて多様な視点の重要性を肌身で感じています。不確実性が増している時代に新しい社会を創っていく上では、多様な視点を取り込んで検討することの重要性がますます高まっているように思います。加えてNECの立場としては、技術のあり方について改めて見つめ直すことが必要になっていると感じています。「NEC未来創造会議」で未来の社会を構想する中で、これから技術がどのような役割を果たしていくべきかを、合わせて考えていきます。今回始まったこの連載コラムでは、より広い視点から技術と人間や社会の関係性について考え、その内容を中心に発信していくことを予定しています。

社会へどんなインパクトをもたらすのか

NECはかつて「ものづくり」の企業でしたが、いまは「社会価値創造」を推進しています。ものづくりを行なっていたころはコンピュータや通信用機器、半導体などを手掛けていました。この時代は、ムーアの法則が代表ですが性能向上を指標としたロードマップに沿ってビジネスを進めていました。技術による競争力だけを考えてビジネスを進めればよかったともいえます。私自身、研究者だったときは世界一のデータを出すことにこだわっていましたが、その技術が創り出す価値について意識することはあまりありませんでした。小林宏治はC&Cを宣言したあと、Man and C&Cとして人間的要素の軸を加えて考えることを提唱しました。そこで、豊かな社会の実現の要がソフトウエアであるとして、ソフトウエアへの取り組みを強化しました。この頃から徐々に技術が実現する性能だけでなく、技術が提供する価値が問われるようになってきたのだと思います。

古く科学の世界では真理の探究に主眼が置かれていて、学会に代表される科学者のコミュニティの中で閉じた議論が進められていました。第2次世界大戦で原子爆弾が使われたころから科学技術と社会のつながりが徐々に強くなってきました。国家プロジェクトで科学技術への投資が行われるようになり、産学連携が進むにつれ、科学技術と社会のつながりが徐々に強まりました。スマートシティのように新しい社会を創る取り組みでは、科学技術と社会が不可分になっています。今年、科学技術基本法が25年ぶりに科学技術・イノベーション基本法に改訂され、人文社会の活用が謳われるようになりました。科学技術と社会のつながりが強くなったことを表す象徴的な出来事であるとも言えます。技術そのものは透明ですが、使う人の意識によってその意味するところや創り出す価値が大きく異なるようになってきました。社会との関係が増すに従って、技術を活用する上で意識すべきことが多くなっています。前回のアメリカ大統領選ではAIの活用が結果に少なからぬ影響を及ぼしたといわれています。データを活用する上ではセキュリティやプライバシーの問題を避けて通ることはできません。こうした流れを受けて、NECは2019年4月に「NECグループ AIと人権に関するポリシー」を策定しました。このポリシーでは「AIの利活⽤が、NECグループ社員だけでなくお客様やパートナーにおいても適正な用途で行われること」を揚げています。社会価値創造を進めるにあたっては、技術開発だけではなく、多様な観点を持ちステークホルダーと連携して進めることが不可欠になっています。

技術と社会の関係性が変わるとともに、企業のあり方、企業に求められることも大きく変わっています。企業がSDGsに沿って目標を設定することはいまや珍しいことではありませんし、ESG投資のような考え方も一般的なものとなりつつあります。いま企業がもつべきは、長期的なビジョンです。自分たちの活動が世の中にどのような価値を提供するのかを明確にして活動することが重要になっています。現事業領域については、現状をベースに今後の展開を検討していくことになります。技術の進化が激しく、世の中の不確実性が高まっているので、現状の枠を取り払って将来社会のあり方を考えることも大切になっています。30年先を見据え、多様な視点から将来を描く「NEC未来創造会議」の活動はこの意味からも重要な活動であると確信しています。