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NEC未来創造会議

RESONANCE, NOT JUST EMPATHY
NECが2050年に見据える、
「意志共鳴型社会」という“人が豊かに生きる”未来

NECが2017年に立ち上げた「NEC未来創造会議」。技術革新が進んだ先にある2050年を見据えて、NECは国内外の有識者とともに「実現すべき未来像」と「解決すべき課題」、「その解決方法」を構想するための議論を続けている。始動から2年、実現すべき未来像として提示したコンセプト「意志共鳴型社会」はついに実装フェイズに突入した。NECが描くこのコンセプトとはいかなるものだろうか。人の意識を変える技術を生み出し続けてきたNECが「未来」を請け負う本義をひもといていく。

(『WIRED』日本版VOL.35より転載)
ILUSTRATIONS BY TOKUHIRO KANO
TEXT BY MANAMI MATSUNAGA

「意志共鳴型社会」を実現するための4つのテクノロジー

有識者との議論をもとに導き出された「実現すべき未来像」から落とし込まれたNECの新たな技術は、意志共鳴型社会をいかに支えるのだろうか。NECフェローの江村が解説する。※4つのテクノロジーの解説は、ボタンをクリック(タップ)すると開きます。

「意志共鳴型社会」を実現するための4つのテクノロジー

有識者との議論をもとに導き出された「実現すべき未来像」から落とし込まれたNECの新たな技術は、意志共鳴型社会をいかに支えるのだろうか。NECフェローの江村が解説する。

EXPERIENCE NETWORK
誰かの「体験」がわたしのものになる?

情報ではなく、体験を共有するネットワークであるエクスペリエンスネットは、人々が「夢」を見つけて、チャレンジに溢れた社会を実現するために、個々人の能力や興味を最大限引き出すテクノロジーです。感覚も含む「体験」が流通されれば、例えば、「スポーツ選手」という夢をもった子どもが、その夢の実現のために必要な能力や生じうる困難の一端をエクスペリエンスネットで垣間見ることができるようになるでしょう。

このテクノロジーが、多くの可能性を秘めた子どもたちの「やりたいこと」や「向いていること」への入り口を複数開き、「夢」の選択肢を拡げるはずです。これをNECが構想するのも、コンピューター技術と通信技術の両面を併せもっているからです。視覚・聴覚情報だけでなく、五感+αで体験するためにどんな情報をネットワークにのせるべきか、心理学者や身体学者など幅広い分野の協力を仰ぎながら開発を進めていきたいですね。

CONTEXT SENSING
「足るを知る」を伝えるために取るべきデータとは

「IoT」という言葉の普及が示すように、センシング技術はすでにわたしたちの暮らしを取り囲んでいますよね。しかし、「意志共鳴型社会」の実現のためには、既存のものとは違うデータを取り、新しい計測方法とその表現方法を検討すべきだと思っています。現状では、簡単に数値化できるものに意識が向かいがちですが、例えば「奥さん怒ってるな」みたいな感覚って単に数値化できない「感じ取る」ものですよね。既存のデータの裏側にある、文脈や感覚も含めてセンシングするというのがこれからのチャレンジです。

もしこれが実現すれば、「足るを知る」という感覚を技術によって伝えることもできるはずです。例えば、生産者の思いや物語をセンシングできれば、自分以外の他者の存在や商品を形づくった自然環境に想いを馳せながら、「自分良し、相手良し、世間良し、未来良し」の四方良しな生活を送ることができるでしょう。

DIGITAL TRUST
シームレスな「相互信頼」を育む基盤

「 意志共鳴型社会」を支えるテクノロジー、まさにそのベースとなるのがデジタルトラスト基盤です。誰かと意志を共鳴させ、自律性をもったコミュニティをつくるためには、あらゆる制約や価値観、習慣の違いに左右されることなく、シームレスにつながり合える「土台」が必要になります。

ブロックチェーン技術など、NECとしてもすでに社会基盤として耐えうる処理能力をもった技術の開発や実用化を進めています。とはいえ、「基盤づくり」はNEC単体でできることではないと思います。目指すのは、数値化・効率化を図るのではなく、多様な価値観を抱える個々人を尊重し合える社会です。そのために企業や地域の枠を超えて、あらゆるプレイヤーと基盤づくりから共創することが重要だと考えています。こうした基盤を含めた技術の進化によって、先祖や偉人などとの時間を超えたつながりも実現するかもしれません。

FUTURE DESIGN TOOL
「選択」に関心と責任をもち続けるために

NECは「AIが答えさえも提示する未来」を望んではいません。AIは好ましいとされる選択肢を提示するまでで、最終的な「選択」をするのは変わらず人間であると考えています。そのためにテクノロジーができることとして重要なのは、人が行なう「選択」への関心とその先の共創に責任をもち続けるような仕組みをつくることです。

未来デザインツールでは、説明可能なアルゴリズムによって選択肢を導く背景を明らかにすることで、自らが選ぶ未来にコミットし続ける意識を醸成しようとしています。もし、このツールが個人ではなく「都市」単位で使われれば、街づくりや政策の決定に対して、より有機的に市民を巻き込むことができるでしょう。個人で利用すれば、年齢・性別に関係なく自らの能力と興味に最適な選択肢が提示され、自己成長をもたらす手応えのある経験を可能にしてくれるでしょう。

技術のNECが「人」を問い続ける責任

創業から120年を迎えた日本屈指の「技術屋」として知られるNECが、C&C宣言として「コンピューター技術とコミュニケーション(通信)技術の融合」、つまり時間と場所に制約されず顔を見てつながり合える未来の実現という構想を発表したのは1977年のことだった。インターネットによる検索エンジンの誕生よりもはるか昔。2019年のいまは当たり前になっている、地球上のどこにいてもつながり合える未来を見通していたのだ。しかし、より正確に言うならば、NECが予見していたのはコミュニケーション技術とコンピューティング技術両輪の技術開発によって「情報伝達能力の制約を無くし、人の可能性を拡げる」未来だった。

人の可能性を拡げるためのテクノロジーを提供し続けてきたNECが、いま新たなる「未来図」を描き、その実装に向けて歩みを進めている。その未来図のための羅針盤としての活動が、「NEC未来創造会議」だ。

本活動が見据えるのは、2045年に迎えるとされているシンギュラリティ(技術的特異点)の“その先”。国内外の有識者を招いて、今後の技術発展を踏まえながら「実現すべき未来像」と「解決すべき課題」、そして「その解決方法」を構想し続けてきた。

活動初年度の2017年には、「2050年に人が豊かに生きる」ために必要な人と技術の価値を定義付け、それを阻む課題についても議論を重ねてきた。続く2018年には、課題の本質をあらゆるレイヤーで生まれている「分断」であると定め、これを乗り越えるために実現すべき未来像として「意志共鳴型社会」というコンセプトを提示した。そして3年目となる今年は、この「意志共鳴型社会」を社会実装するべく、全4回にわたって有識者とより深く、多角的な議論を展開しながら、共創活動もスタートさせた。

本活動を牽引してきたのは、NECフェローの江村克己だ。江村は、研究者として、そしてNECのCTOとして、「強い技術」が世の中を変えていくさまを最前線で見続けてきた。「強い技術」とは、「ナンバーワン」と「オンリーワン」にこだわり続けた技術だと江村は言う。「数字で測れる性能だけでなく、社会課題を解けることに技術の強さが宿るいま、難しいことですが」と前置きをしながら、こう続けた。「難しくてもナンバーワン・オンリーワンにこだわり続けることは、とても大切です。いちばんであることで周りに人が集まり、強さはさらに増す。そのこだわりがあるからこそ、多くの人に信頼される企業であり続けられるのだと思います」。ナンバーワン・オンリーワンの技術で世界を牽引してきたNECだからこそ、テクノロジーと人の意識の両面から、実現したい未来を構想していく責任がある。なぜなら、分断を生むのは、テクノロジーではなく、それを使う人の意識であり、技術一辺倒では分断を拡げ、また新たな分断を生んでしまうからだ。

さらに江村は「技術の進化により先を見通すことが困難ないまこそ、多様な意見を織り込んだ『実現すべき未来像』からバックキャストして、技術開発に落とし込むことが重要」だと語る。だからこそ、理論物理学者やアーティスト、僧侶や将棋棋士、文化人類学者、建築家などさまざまな有識者との議論を重ねてきた。

2050年には場所・空間・時間を超えた“共体験”が実現するだろうと、江村は語る。まさに今年議論されたのは、情報社会の先にある体験社会に進化したときに現れる「体験のネットワーク」が、人・コミュニティ・社会の分断をつなぎ直し、人間の意志共鳴を促すことができるのかということ、そして、そのためにあるべきテクノロジーやルールづくりの方法、人々の価値観や信頼の在り方だった。NECの目指す「人が生きる、豊かに生きる」は2050年にいかに実現されうるのか。人の能力を最大限に引き出すための技術を探求するNECの旅は、NEC未来創造会議という「羅針盤」を掲げながら続いていくのだ。


江村 克己 | KATSUMI EMURA

NECフェロー。東京大学大学院工学系研究科修士課程修了。1982年光通信技術の研究者としてNECへ入社。製品企画部門での経験やNEC知財部門のトップを経て、2010年に中央研究所を担当する執行役員に就任。取締役執行役員常務兼CTO就任後、現職。87~88年米国Bellcore客員研究員。現在、情報処理学会会長。工学博士。