Forum Report

「NEC未来創造会議に期待すること
──第1回会議を終えて──」
第1回会議 レビュー⑤

数回にわたってレポートしてきた「NEC未来創造会議 2018 第1回有識者会議」は、今から32年後の2050年を見据え、2つのテーマで討論が展開されました。前半の「コミュニティの未来」では、ヒトはコミュニティ(=群れ)に戻り、その中で成長するといったお話がありました。また、後半の「働き方・暮らし方の未来」では、無駄と言われていることの価値が上がるのではないかといった意見も出るなど、表裏一体の価値観の存在も浮き彫りになってきました。今回は、NEC未来創造会議 2018の第1回会議のまとめとして、メンバーから寄せられた提言を紹介します。

NEC未来創造会議メンバーの写真

“未来の働き方や暮らし方”は
“コミュニティ”と密接につながっていく

藤沢 久美氏の写真

ソフィアバンク代表
藤沢 久美氏(ファシリテーター)

2つのテーマでの会議を終え、ファシリテーターである藤沢久美氏は、次のようにまとめました。
「後半の『働き方・暮らし方の未来』に関しても、結局前半の話題であった『コミュニティ』と、深くつながるお話をいただいたという気がします。人々が働いたその結果は自分で能力を見つけるのではなく周りが見つけてくれるのだと考えると、やはりコミュニティを作る──“群れる”という行為が実は未来の働き方・暮らし方にとっても、とても大切なことなのかもしれないというふうに見えてきました」
そして会議の最後、藤沢氏の呼びかけで、メンバーから第1回有識者会議を終えての意見や感想が語られました。理想の未来を実現するためにテクノロジーにできること、NECに期待すること、また、本会議の今後の進んでいくべき方向など、メンバーからはさまざまな提言が飛び出しました。

林 千晶氏の写真

多くの人とのふれ合いに技術で何ができるか

会議中、ご自身の知識や体験から、さまざまな未来の可能性を示唆された林さんは、次のようにまとめています。
「人は自分ひとりでは夢も見つけられないし、生きがいも見つけられないことにあらためて気が付きました。隣にいる人によって、その人のために何ができるかということがモチベーションになったり、逆に不満になったり、怒りになったりして行動が起こるという意味では、もっといろいろな人がいて、ふれ合うことができるかということに、技術で何ができるかを考えてみたいですね」

ロフトワーク代表取締役

林 千晶氏

松村 圭一郎氏の写真

エキスパートではなく生活者がつくる技術を

松村氏は、会議の後半で林氏が紹介した「アクティブフルムーン」を例に、技術の作り手についても言及しました。
「林さんのアクティブフルムーンのお話はすごく示唆的だなと思うのですが、男性がなぜ三日月なのかというのは、仕事だけやっていたら生きていけるから。でも、もちろんそれだけで社会が動くわけではなく、そういう人たちが集まって分業して初めて成り立ちます。三日月の人に欠けているのは、生活という部分。そのような人間が生きていくために必要な部分を技術でどんどん代替していくと、ますます三日月の人間が増え、そんな三日月の人がつくる技術には、大切な生活者の視点が欠けてしまうと思います。
人間は本来、人との出会いとか、こういうところに喜びを感るんだと知っていたり、手を動かしたら自分にも何かがつくり出せるんだといった、そういう人間的な感覚を持った人、エキスパートというよりは生活者に、技術をつくっていただきたいなと、お話を伺いながら思いました」

岡山大学文学部准教授

松村 圭一郎氏

羽生 善治氏の写真

ネットワークの形成は人の意思が大切な要素に

羽生氏も、人と人とのつながりや、人が自分の意思を持って活動していく点を次のように述べています。
「すごく技術が進んでも、最後に一番大事になってくるのは、人と人とのネットワークなのかなと思いました。そのネットワークをつくっていくのは、もしかしたらAIも少し関わることになるかもしれないですが、やはり人。人が自分たちの意思を持って、『こういうネットワークをつくる』ということをイメージしていくというのが大事なのではないかなということを、今日すごく感じました」

将棋棋士

羽生 善治氏

スプツニ子!氏の写真

多様な視点からの議論がテクノロジーを未来に生かす

スプツニ子!さんからは、この日の会議の内容を踏まえた上で、より広い視点での議論の提案がありました。
「今日は非常に多様で面白いお話をたくさん聞けて楽しかったのですが、最後に気付いたのは、今日集まったのが比較的好きなことをやりながら生きている皆さんで、もしかすると視点が偏るのではないかなということ。今こうしたテクノロジーの議論がいろいろなところでされている中で、じゃあどんな人と議論をするか。
最近すごく気になっているのが、日本のコンビニは店員さんたち。ものすごく多様で、しかもインターナショナル。彼らはある種、移民の先駆けのような形で、毎日いろいろなお客さんと接している。そこで、ずっといろいろなところで言っているのが、“全国コンビニサミット”の開催。そこで国際的な議論と日本社会やテクノロジーについて話せるのではないかなと思いました」

アーティスト

スプツニ子!氏

長谷 敏司氏の写真

AIがいまだ到達できない価値の発見というヒトの領域

職業柄、未来の話をよく考えるという長谷氏は、まだAIが到達していない領域について次のように考察しました。
「今日話を聞いていてすごく面白かったのは、価値を評価値順に並べるものはもうあっても、価値を発見する知能ユニットとしての人間というのは、代替するものが現在何もないこと。他者の価値を発見したり、コミュニケーションによって価値を生み出したり、見出したりする機能は、今のところ自動化できないんだなという点ですよね。ここのところが、ものすごく知能のパワーが要求されているところです。
つまり社会の多様化を進めるには、多様な価値を認めるための知能のパワーが基盤として必要です。ダイバージェンスをフェアに、教育の行き届いていないところまで広げていくために、貧しい場所に価値を発見するためのリソースを持っていく人や、「あなたたちには価値があるよ」ということを言いに行く人たちも必要になる。そうなると、実は価値を発見するユニットはものすごい数が必要で、林さんの言われるフルムーン的な能力まで掘ろうと思ったら、その知能ユニットは人口よりもたくさんの数が必要かもしれない。そう考えると、人間の価値を発見するユニットというのは割と直近、これから50年ぐらいの課題として、自動化ツールができてくると人間社会と共存するにはいいのではないかと、今日話をしていて思いました」

SF作家

長谷 敏司氏

江村 克己の写真

多彩な視点からの議論で技術開発の方向性を見直す

NEC CTOの江村克己は、今後の課題となるポイントについて次のように述べました。
「今日いろいろな視点をいただいて、こういうことも考えたほうがいいのではないかといった課題が、いろいろなところで出てきたと思います。私は最初のところで『やはり技術の進化のことも考えないとね』と言ったのですが、技術のどの軸で見るかという点で、『私たちが普段思っていることと違う切り口で見る必要があるね』と言われた気がします」
さらに江村は、IT企業としてのNECが持つべき視点にも言及しました。
「松村さんが最初のほうでおっしゃった『見えない外部』の存在も重要です。IoTで世の中を見ようとするとどうしても無機的なところを見てしまうのだけど、そうではないところをもっと見ないといけない。また、技術開発の方向性として、いいことばかり見ているけど、嫌なことに対する研究開発が少ないといったお話もありました。そうすると、これまでやってきた“性能が全て”といった方向性の考えをもう一度見直して、NECとして『こういうことをやってみたいんだけど、どうでしょうか?』という問いにつなげ、皆さんにご提示できればと思いました」

NECチーフテクノロジーオフィサー(CTO)

江村 克己

「ヒト」がキーワードとなる未来では何が重要になるのか

「NEC未来創造会議 2018」の第1回会議の内容を振り返る際、それぞれのメンバーから出てきた言葉は、「ヒト(人)」というキーワードでした。人が人として生きて行くために必要なもの。それは隣人=コミュニティであったり、人に寄り添う技術であったりといった気づきがありました。そして、AIを含む今後のテクノロジーが進んでいく方向を決定づけるのも「人の意思」であり、それはこの先の社会の方向性を左右する重要な役目を担っていく──ここまでが第1回会議で見えてきた大きな流れと言えるでしょう。このあと、どんな議論が展開するのかは、9月に開催される第2回会議のレポートでお伝えします。