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メンバーズ・アイズ:ミチオ・カク

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ミチオ・カク氏は、ニューヨーク市立大学で教鞭を執る傍ら、様々な科学番組に出演。
ノーベル賞受賞者をはじめ、新知見の最前線にいる、トップクラスの科学者300人以上へのインタビューを行ってきた。
それらを基に未来予測をまとめたのが、『2100年の科学ライフ』(ミチオ・カク:著  斉藤 隆央:訳 NHK出版)だ。
内容の一部を引用しながら、カク氏の未来展望を紹介していこう。

ミチオ・カク氏の写真

拡張現実と仮想現実が教育や社会を変える

『2100年の科学ライフ』

近い将来実現する技術として、カク氏が注目しているのが、瞬きでインターネットに接続できる「インターネットコンタクトレンズ」である。ワイヤレス接続の携帯型制御装置によって、インターネットの操作を行うデバイスだ。「将来、学期の試験を受ける学生たちは、コンタクトレンズでこっそりインターネットを調べて問題の答えを出せるようになり、丸暗記させることの多かった教師たちは、ちょっと困ったことになるかも知れない」と笑う。そうなると教育者たちは、暗記教育の代わりに、思考力と推理力の陶冶に重点を置かざるを得なくなる。その時、すでにゲームの定番になっている「仮想現実(VR:バーチャルリアリティ)」が、重要な教育ツールになると語る。「学生たちを、未知なる、架空の世界に、自由に誘えるからです。そこでは、『触覚テクノロジー』によって、バーチャルな世界の物体を、触覚で感じることもできるようになるでしょう」。

そしてその先には、VRと現実が混ざり合った「拡張現実(AR)」の世界が実現するという。例えば、インターネットコンタクトレンズを装着して、ローマの古代遺跡を観光で訪れると、ガイドをしてくれるだけではなく、実際に崩れた遺構を見ながら、完全に再現された全盛期の建物の姿もリアルに見ることができるのだ。

そこでは、特殊な眼鏡を必要とせず、細長い凸レンズを無数に並べたシート「レンチキュラーレンズ」で聴視できる3Dシステムや、「ホログラム」の技術も活躍する。ホログラムは、離れたところにある物などを目の前にあるかのように見せてくれる3D技術の一つ。現在、ホログラムの3D画像を作るためには、膨大な情報量が必要であること、平面画面では立体像に触ろうとすると画面に手がぶつかってしまうこと、などが開発の課題として挙げられているが…。「円筒状やドーム状の画面の内側に人が座り、ホログラムのイメージを映し出せば、人は本当にそこにいるかのように、自分を取り巻く3D画像を見ることができるようになるかもしれません」。

進化する人工知能とヒトの脳が直結する未来

「人工知能(AI)」はこれから、どのように進化していくのだろうか。近い将来、AIを搭載したロボットは、外科医や料理人、ミュージシャンになれるかも知れない。アメリカで開発され、すでに1999年から臨床用機器として販売されている手術支援ロボット「ダ・ヴィンチ(da Vinci Surgical System)」は、1~2cmの小さな孔から内視鏡カメラとロボットアームを挿入し、高度な腹腔内手術を可能にしている。術者は、3Dモニター画面を見ながら、あたかも術野に手を入れているようにロボットアームを操作し、手術を行うのだ。「今はロボットではできない、微細な血管や神経線維などの手術も、熟(ルビ:こな)せるようになるはずです」と、カク氏は言う。

さらに、2009年に日本で、全自動でロボットがラーメンを作る店舗が話題を呼んだ。今後は、様々なメニューやレシピを読み込み、多様な料理を作るロボットが登場してくることだろう。

そして、さらなる未来は、このように進化するロボットと、人間の知的資本、すなわち知識や経験、リーダーシップなどが、「ブレインネットワーク」を介して繋がっていく。コンピュータが脳と直結し、考えるだけで、ビデオゲームで遊んだり、電子メールの読み書きをしたり、ロボットアームを動かして物を掴んだりできるようになるのだ。脳卒中で全身不随になった人、筋萎縮性側索硬化症(ALS)の患者などが、自ら日常生活を送れるようになる未来がすぐそこまで近づいている。

出典:『2100年の科学ライフ』(NHK出版)

知脳資本主義が完璧な市場経済を生み出す

カク氏は、経済や社会の様相、とりわけ「富」のあり方についても、その着地イメージを提起している。

テクノロジーの発展は、資本主義にも多大な影響を与えてきた。アダム・スミスが唱えた資本主義は、需要と供給が一致した時に、商品の価格が決まるというものだ。しかし、消費者と生産者は、商品の需給について不完全にしか学習できないため、価格は場所によって大きく変わる可能性がある。つまり、現状の資本主義は、不完全なものだと明言する。

「今、求められているのは、『パーフェクト・キャピタリズム(完全資本主義)』です」。生産者と消費者が市場についてなんでも知ることができ、完璧な価格が即座に、瞬時に決まる市場経済。例えば、消費者が、インターネットを利用して、世界中で売られる商品の価格や性能の比較を行うことができれば、それが可能になるというのだ。

拡張現実の技術として紹介した、「インターネットコンタクトレンズ」を装着してスーパーマーケットに行けば、目の前の商品がお買い得かどうか、すぐに判断することが可能になる。生産履歴、性能、価格の比較や、商品の特徴や長所、短所などを瞬時に知ることができれば、生産者と消費者の関係では、消費者が確実に有利になる。生産者は、データマイニング(*)によって、消費者の欲求やニーズを把握したり、競合商品の市場価格を調べたりするが、消費者が新たな価値を知的、創造的に市場に求めていけば、生産者は絶えず変化する消費者の要求に応えなければならなくなる。「商品資本主義」から「知能資本主義」への転換。「進化するテクノロジーを駆使して生み出されるこの概念が、これからの国の経済力を大きく左右することになるでしょう」。

*データマイニング……コンピュータを駆使して大量のデータを分析し、必要な知見を抽出する作業。

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