Event Report: C&Cユーザーフォーラム & iEXPO 2017

NEC未来創造会議

基調プレゼンテーション
「コンバージェンスとダイバージェンス、その中での人間の可能性」

ケヴィン・ケリー氏(『WIRED』誌 創刊編集長)

コンピュータやAIに囲まれた
プラットフォームの中で生きる

これから私の話す世界は、100年先ではなく、10年、あるいは20年くらい先のお話です。
我々はこれから、新しいプラットフォームの上で人生を経験していくことになります。それは、コンピュータの歴史の第三ステージに当たると言えるでしょう。
最初は1950〜80年代のメインフレームやデスクトップがメインで、コネクトされていない時代でした。二番目はそれらがコネクトされたウェブの時代。これから先は没入型のコンピュータ、私たちの暮らしが常に、コンピュータやAIの処理に囲まれているという生き方になります。

ケヴィン・ケリー氏の写真

「WIRED」誌 創刊編集長

ケヴィン・ケリー氏

この世界では、全てのものが繋がって、私たち人間とも間接的に繋がっています。コンピュータの処理や認知が街や暮らし、環境のあらゆるところに配信されていきます。皆様の携帯も、自動車も、この環境の中の一員になります。そして、技術の世界ではエッジ・コンピューティングと呼ぶこともあります。中央で作業が行われるのではなく、エッジの部分で処理が行われ、我々の作り上げた全てのものに認知能力があって、それぞれが動いてクラウドを構成するというイメージです。

この出現しつつある没入型のコンピュータのプラットフォームには、7つのポイントがあると考えています。

特別講演の様子

まず1点目ですが、規模感が全く違う次元になります。地球上の情報量は既にペタビットになっていますが、それがエクサビット、ゼタ、ヨタ、その先の科学的な単位さえまだない状態になっていきます。これだけ規模が大きくなると、新しいハード、ソフト、計算方法を、人間が作るチャンスもあるということです。

Facebookは世界で最も大きなネットワークで、20億人もの人が繋がっています。また、超巨大都市、メガシティも大変大きなマシンだと言えるでしょう。あらゆるデバイス、トランジスタ、チップ、全てが繋がっているということを想像してみると、世界的な巨大コンピュータを使用しているとも言えるわけです。我々は将来、この巨大な惑星サイズのマシンを使いこなすようになっていくでしょう。例えば、100万人がリアルタイムで何か1つのプロジェクトに従事することも可能になるのです。
しかし、まだ欠けているパーツもあります。例えばその時に、誰の手柄であるのか、評価をどうやって追跡するのか、支払いはどうするのか…。こういうツールは今やっと生まれつつある。その一つの技術がブロックチェーンです。ブロックチェーンは人がどういう貢献をしたのか、そのクレジットがチェーンを戻って実際に貢献をした人にまでその評価が返るという仕組みになっています。100万人以上の人間がコラボレーションして、同じ何かをやるという時には、こういった技術が活かされるはずです。

それから2つ目はトラッキング、追跡です。新しい世界では、自分自身や友達をトラッキングすることもありますし、会社や電話にトラッキングされたりもします。バーチャルリアリティーも、自主的に私たちが監視されているものになります。我々の全ての動作や感情がアバターに入力されているわけです。すると、世界最大の企業はVRの企業になるでしょう。何故なら、彼らが最も豊富にデータを持つようになるからです。

データが私たちの時代のお金です。お客さんについてのデータは、お客さんと同じくらい価値があります。端的な例として、フォードは1億台の車を作っていますが、今の時価総額は、大体440億ドル。それに対し、テスラの生産台数はわずかですが、時価総額はフォードを超えています。フォードは実に多くの車を生産してきましたが、顧客の情報をほとんど持っていません。一方のテスラは、10億マイル分以上の顧客の走行データを持っています。だからこそ、テスラという会社の価値の方が高いわけです。
また、データを他のデータに繋げると、その価値はさらに加速度的に上がり、ネットワーク的な効果が生まれます。使う人が増えれば、より性能が上がる。性能が上がれば、ユーザーもますます増えるというサイクルが動いています。AIも同じです。

所有からアクセスへ、モノから体験へ
経済価値がシフト

3つ目のポイントは、アクセスです。所有ではなく、アクセスできれば良いということです。例えば、ウーバー、もしくはドローンで、20〜30分後に欲しいものが届くのであれば、それでいいわけです。3Dプリンタで製造できれば、すぐに物も実現できるわけです。所有すると色々な負担がありますので、アクセスするだけ、使うだけの方がいいという考えが広まっていきます。究極的には今後、ポケットに何も入れない人が出てくるでしょう。

4つ目は、ビジュアル。本を読む人々が、今ではスクリーンを眺める人となりました。しかし、ビジュアルな文化であるにも関わらず、私たちはビジュアルなサーチの技術を未だ持っていません。画像でサーチをする、特定の映画の特定のフレームを探すということができません。でも、この新しいプラットフォームではそれが重要になってきます。グーテンベルクが文章を印刷機にかけたように、今度は新しいプラットフォームで、ビジュアルなものに対応するツールを作らなければなりません。

5つ目の特徴は、体験です。没入型のコンピテーションでは、我々がVRで機械の中に入り込んでいくことができます。例えば、VRゴーグルを付けて、細い橋を渡るという実験をします。すると、踏み外したら死んでしまうのではないかという気持ちになります。そして、このVRゴーグルを取った後も、見たという記憶ではなく、体験したという気持ちになります。即ちVRによって、インターネットは情報の場ではなく、体験の場になっていきます。体験をダウンロードする、体験を共有するということになってくるのです。
これは多くの人にとって、良いニュースです。経済の付加価値を考えますと、まず、物はコモディティでした。それに価値を付けて商品に変え、さらにサービスにしました。そして、今度はそれを体験にするわけです。経済を今度は体験経済へとシフトさせていく。これが新しいプラットフォームで起こることです。
そして、この体験が、新しい通貨、貨幣となります。我々はそれを共有し、それを取引し、購入することになるでしょう。そして、一番魅力的で究極的な体験とは、他の人達と関わるということです。VRは、ソーシャルメディアの中で最も社交的な場になるでしょう。

特別講演の様子

コンバージェンス(収斂)と
ダイバージェンス(多様化)

6番目の大きな特性は、端末同士が直接通信するということです。携帯電話同士で、あるいは靴からジャケットにという形で情報を提供するわけです。
では、その中でどうセキュリティを確保するのか。また、アイデンティティも分散型でどう確保するのか。あるいは、例えばブロックチェーンのように権威そのものも分散型にしてしまうことはできるのか。信頼も分散型にしたらどうなるのか。この新しいプラットフォームの中では少しずつ、それが形作られていくはずです。

そして、最後にお話したいのは、文化的な側面のコンバージェンス、収斂です。我々は今、同じような洋服を着て、同じような車を運転し、同じような映画を観て、同じ科目を学校で勉強しています。同じような音楽をみんな聴いています。また、同じようなエアコンが効いていてWi-Fiの入っている同じような箱の部屋の中で住みたいと願っています。
マズローは、欲求のヒエラルキーを作りました。一番下は生理的な欲求、一番上にあるのが自己実現の欲求です。
何が起こっているかと言いますと、欲求の低い基本的なニーズのレベルではコンバージェンスが起こり、みんな同じものに向かって行っています。一方、高次のレベルではダイバージェンス、即ち私たちの夢やアイデンティティ、何を願うのかが、どんどん分かれていきます。

マズローの欲求 5段階
Maslow's hierarchy of needs

世界中でおなじようなものを求めていくということで、今、私たちはグローバルなプラットフォームを作っています。それが、10年先、20年先に起こってきます。私たちはその発端のところ、こうしたプラットフォームが作られる第1日目、AIなどが作られる一番初めのところにいるわけです。

25年後、今を振り返ったらどう思うでしょうか。この2017年からスタートしたのだと、2017年はとても画期的な年だったと思うはずです。今ほどツールが揃っている時代はありません。これほど大きな市場も今まではありません。そして、これから先どこに向かって行くのかも見えている。すぐに摘み取ることができる果実もある。そして今であれば、競合他社も少ない。参入にかかるコストも低い。だから今は絶好のチャンスなのです。

特別講演の様子

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