Event Report: NEC iEXPO KANSAI 2017

NEC未来創造会議 関連セッション
「人間がAIとつながる未来」

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第2部 パネルディスカッション
パネリスト/
ミチオ・カク 氏(ニューヨーク市立大学 理論物理学 教授)
松尾 豊 氏(東京大学大学院 特任准教授)
江村 克己 氏(NEC チーフテクノロジーオフィサー(CTO))
モデレーター/
林 千晶 氏(株式会社ロフトワーク 代表取締役)

眼の技術が、ロボット産業の大進化を促す

ミチオ・カク氏の特別講演を受けて、まず東京大学大学院特任准教授の松尾氏が、ロボット産業が自動車産業より大きくなるという提起に賛同を示した。

東京大学大学院 特任准教授

松尾 豊氏

「ディープラーニングが進展すると、アマゾン35個分くらいの産業規模になるという記事がありました。ロボットはこの数十年、パターン認識が苦手な状況が続いていましたが、私は、ディープラーニングで大きく変わると思っています。深い構造のネットワークにより、簡単な関数の組み合わせで、非常に複雑な関数を近似することができます。非常に高度なパターン認識も実現されるようになってきました。ロボットは、モノを摘まんで持ち上げるということが苦手でしたが、上手にできるロボットも開発されています。ごみを取り除く、トイレを掃除するなど、産業としても大きな可能性があると思いますね。

こうした作業を可能にするディープラーニングは、目の技術です。イメージセンサとディープラーニングを組み合わせることで、ロボットは人間以上に眼が見えるようになるはずです」

アンドリュー・パーカーの著書「眼の誕生~カンブリア紀大進化の謎を解く」のなかで、「生物が眼を持つことで、カンブリア大爆発は起きて、種が多様化した」と述べているように、「ロボットや機械の世界で、同じようにカンブリア大爆発が起きる」というのが、松尾氏の予測だ。

では具体的に、どんな分野でロボットは活躍するのだろうか。カク氏は、講演の中で「1番インパクトがあるのは、汚い、キツい、危険な3Kといわれる分野」だと指摘している。原発の廃炉作業をしてくれるロボット、災害現場で働くロボット、宇宙で空間を自走して、例えば火星の探査を行うロボットなどの開発競争も、世界的に盛んに行われている。

一方、松尾氏は、もっと身近なところで、ロボットは活躍すると提起した。

「自動ドアに眼をもたせることで、ディープドアというものが簡単にできるだろうと思います。自動ドアは近づいて圧力をかける、あるいは赤外線センサが感知すると開きます。しかし、間近まで行かないと開かないし、通り過ぎてもしばらく閉まりません。自動ドアは人が近づいてくること、通り過ぎたことが見えていないからです。イメージセンサを付け、そこにディープラーニングの仕組みを入れれば、近づいてくるだけでとサッと開き、通り過ぎるとサッと閉まる。例えば、おばあさんがゆっくり歩けば、ゆっくり開いてゆっくりと閉まる。空調上も、安全管理上もいい、快適な自動ドアが誕生するはずです」

AIで、ロボットはどこまで賢くなれるのか

カク氏は、続けて語る。

ニューヨーク市立大学 理論物理学 教授

ミチオ・カク氏

「この先、ウサギやネズミくらいの知能をもったロボットが出て来るかも知れません。今世紀後半には、犬や猫レベルの知能を持ったロボットが、そして今世紀の最後には、猿レベルの知能をもったロボットに辿り着くかも知れません。猿は自分が猿だということをわかっています。子犬は、飼い主を自分と同じ仲間だと思っているのです。皆さんに犬が従うのは、群れの長だと思っているからです。それなりの知能をもったロボットは将来、確実に実現するはずです。

しかし今現在、ロボットには常識がありません。水は濡れるとか、母親は子どもより年上だとか、私たちが当たり前にしていることを理解できません。また、人とのやりとりが苦手です。噂話をしたり、誰かを説得したり、愛を語ったりすることはできません。こうしたことが求められる分野では、人間の仕事にロボットが取って代わることはないと思います」。

カク氏は、「AIは、いつになったら、株価を予測してくれるのですか」、と良く聞かれるそうだ。

「友人がディープラーニングを使って、何千ものポイントを学習させていますが、株式市場にはあまりにもたくさんの要素があるので、単純なアルゴリズムでは予測はできません。人間の心理、大衆の動向、企業経営層の善し悪し、法的な問題などを総合的に見て、最終的に人間が判断すべきだと思います」

これが、カク氏の答えだ。

NEC チーフテクノロジーオフィサー(CTO)

江村 克己

では、NECでは現在、具体的にどのような分野でAIの活用を進めているのだろうか。取締役CTOの江村氏に尋ねてみた。

「嘘のないデータを使い、ゴールが定まった問題を解くことは、かなり実現しています。例えば、工場内でセンサの情報を使い、故障が起こらないようにする、生産効率を上げる、といったことは、非常にうまくいくようになってきました。しかし、労働生産性を上げるというミッションのためには、人とAIの役割分担を考えることが必要で、AIをどう使うかという話になります。AIは決して万能ではありません。AIを入れた時に、アウトプットされてくるモノをいかに理解し、判断するのか。様々な産業分野の知識と合わせて、この問題を解いているのが現状です」

ビッグデータの活用ために、
データの限界を知る

AIの実用化研究には、ビッグデータを分析し、判断し、マッチングなどを行う事例もある。例えば、どこの会社に就職して、どんな仕事が向いているのか。あるいは、結婚相手にふさわしいのは、どんな人か。こうした作業を、AIはこなせるのだろうか。

松尾氏がまず、答えた。

「たとえば受験は、試験科目を5科目とかに絞って行われています。人間の幅広い能力をいくつかの主成分に限って、見ているのです。従来のようにビッグデータを扱えなかった時代なら、それも仕方のないことでしょう。しかし今、ビッグデータを扱えるようになってきているわけですから、就職にしろ、婚活にしろ、マッチングはもっと細かく、正確にできるのではないでしょうか。ただ問題なのは、データでマッチングすると、幸せ度が減るという意見があることです。自分が見える範囲で幸せな状況にあるのならば、ビッグデータによるマッチングを選ぶ必要はないのかも知れません」

「データの限界を知ることも大切です」、と語るのは、カク氏だ。

「アメリカでは、3つの嘘があると言われています。普通の嘘、とんでもない嘘、そしてデータという嘘(笑)。人は嘘をつきますし、データも組み合わせることで、もっともらしく見せることができるからです。例えば、結婚相手をマッチングされた時、自分の理想と全然違うかも知れません。女性は一般的に、異性の人柄を見抜く力があると言われますが、どうしてでしょう。それは、男性が嘘をつくからです。信頼性のないデータもあるということを考慮しなくてはなりません」

ロフトワーク 代表取締役

林 千晶氏

「データの力は大きいと思います。データがこういう結果を出しましたと言われると、ついついそちらに走ってしまうところがあります。データが示すことと、人間が感じることには差があるので、上手につきあっていく必要がありますね。判断するときに、AIの方が得意なこともあるでしょうが、人間の可能性も忘れてはいけないと感じました」

こう話すのは、モデレーターの林氏である。

「そうですね。未来創造会議のメンバーである大阿闍梨の塩沼氏の話を聞いていると、人間はものすごい能力を持っているのだと考えさせられます。AIが進んでいるということに、多くの人々の意識が向かっていますが、人間もまた、人間の知的資本とは何なのかを哲学し、自らの能力開発を忘れてはいけない。これが本日のパネルディスカッションの結論でしょうか」と、江村氏は結んだ。

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