Event Report: NEC iEXPO KANSAI 2017

NEC未来創造会議 関連セッション
「人間がAIとつながる未来」

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第1部 特別講演
ミチオ・カク氏(ニューヨーク市立大学 理論物理学 教授)

AI、ナノテク、バイオの融合がもたらす
第4の変革の波

これまで物理学者たちは、3回の革命を起こしています。第1の変革の波は、1800年代。熱の秘密を紐解いて蒸気機関を創り、産業革命を可能にしました。それは、物理学者が、1ポンドの石炭でどれだけのエネルギーを作り出せるかを計算することができたからです。その80年後、次に電気と磁気の秘密を紐解き、電気と自動車による第2の波を生み出し、ラジオやテレビも発明しました。第3の波は、コンピュータ、人工衛星、レーザー、そしてインターネットによるものです。そして今、第4の変革の波をもたらすと考えられているのは、AI、ナノテクノロジー、バイオテクノロジーの融合です。

ニューヨーク市立大学 理論物理学 教授

ミチオ・カク氏

ロボット産業は、
自動車産業を凌ぐ巨大マーケットに

今、AIが、最も大きなインパクトをもたらしているのは、汚い、きつい、危険な仕事、いわゆる3Kといわれる分野です。インターネットを創り、宇宙プログラムを創ったアメリカ国防高等研究計画局(DARPA)では、福島原発の処理を行うロボットの開発を奨励しています。放射線量が高く、危険な環境で、床を掃き、ガレキを片付け、バルブを捻ったり、車を運転できるロボットを開発せよと、世界の科学者たちに呼びかけているのです。

また、ロボットは今後、エンターテイメント、看護や介護、レストランのシェフやウエイターなど、様々な分野に普及していきます。将来的にロボット産業は、自動車産業のマーケットを凌駕していくでしょう。

自動車産業が裾野の広い関連産業を生み出したように、ロボットを作る、モニタリングをする、プログラミングをする、デザインする、修理をするなど、ロボット産業もやがて多様な雇用を生むことになります。そして、自動車自体もロボット化していきます。自走し、自分で駐車し、車は人と会話するようになります。これから自動車は、所有するモノから、リースするモノに変わる。必要な時に呼び出して目的地まで送ってもらい、帰るときにはまた呼び出すという利用方法になるでしょう。

インターネットは
ブレインネットへと進化する

VRとAR(拡張現実)、そしてAIを駆使することによって、ゴーグル、イヤホン、腕時計といった端末で、人々は会話をするようになるでしょう。また、インターネットに接続できるコンタクトレンズも開発されています。最初に購入するのは、大学生ではないでしょうか。まばたきをすれば、試験のすべての解答を見ることができるからです(笑)。

また、観光客がローマの街を歩けば、かつての古代遺跡の姿が蘇り、それを目の当たりにすることができるでしょう。あるいは、市場で買い物をしたい時は、好きな言葉で話ができ、商人の言葉も翻訳してくれますから、値切り交渉も簡単です。

これは夢の話ではありません。物理学者のホーキング博士は、しゃべることも、手を動かすこともできませんが、眼鏡の右側にチップが入っていて、ラップトップにつながっています。彼は、脳波でコンピュータにつながり、コミュニケーションをしているのです。

このように将来的には、脳とインターネットが直接つながるようになるでしょう。VR、ARがコンタクトレンズに埋め込まれ、脳がインターネットにつながると、人々は思い浮かべるだけで、魔法使いのようにモノを動かしたり、自動車を呼んだり、メールを打ったり、店の予約をすることができるようになるはずです。

記憶や思い出を、
脳にアップロードできる未来

ある映画のなかで、主人公が、火星に行くという記憶を脳に埋め込まれました。これは映画の中だけのお話ではなく、実際に記憶のアップロードに、2年前に成功しているのです。短期記憶は、海馬で処理されその後脳の外側に送られて、記憶は長期保存されます。海馬の両側に電極を付け、電気信号でマウスにチューブから水を飲むことを覚えさせる記録をとりました。記憶を記録したわけです。猿による実験も行われています。一端忘れさせる処理をして、記憶を再びマウスや猿の脳に戻すと、忘れていた水を飲むという行為を思い出させることができたのです。そして、次のターゲットは、アルツハイマー症の患者です。ブレインペースメーカーに自分の名前や家の場所、家族のことなどを記憶として埋め込むのです。

もちろん、そこには危険もあります。MITでは、マウスに偽の記憶を埋め込む実験も行っています。これは、科学技術倫理として、慎重に考えなければいけない問題です。しかし、こうした技術を善用すれば、単純な記憶を人間の脳にアップし、いつの日か、感情、感覚、記憶、知覚などがインターネットにつながり、ブレイン・ネットワークを形成するようになるでしょう。

MRIで人の神経回路を
マッピングする研究も台頭

「コネクトーム・プロジェクト」という、21世紀の大きな科学的課題に取り組む画期的な研究も行われています。精神病の解明を目的に、人間の脳をMRIでスキャンし、その構造を機能と行動に結びつけることを目指しています。

ヨーロッパでは、コンピュータで脳の構造を再現する研究も行われています。すでに、マウスの神経回路を数分間再現できるところまできています。一方、アメリカでは、神経細胞を1つずつマッピングする研究が行われています。レーザーを使う、「オプトジェネティック(光遺伝学)」と呼ばれる、光でタンパク質を制御する方法です。光学と遺伝学を融合した新しい研究分野であり、これから神経回路機能の解明のために貢献していくはずです。

アインシュタインと語る、
デジタルな不死の実現

最後に、死の問題について考えてみたいと思います。永遠の命は、昔から人類の夢でした。DNAのミスが重なると老化が進み、人は死にます。しかし今、老化の解明やその制御の研究も進み、将来的には30代のままで長く生きるという時代が来るかも知れません。 

今、個人情報や個人史などをデジタルな足跡として残すことができます。生き様のビデオ記録やクレジットカード記録などを「コネクトーム(神経回路の地図)」とつなげれば、自分自身を永遠に続くモノとして再現、保存することも不可能ではありません。それはまさに、「魂の図書館」の実現です。

図書館に行くと、チャーチル、ヒトラー、アインシュタインについて書かれた書籍を手に取り、読むことができます。では、チャーチルと対話ができたらどうでしょう。彼の記録などをすべて組み合わせ、デジタルイメージを作って、語りかけることができるようにするのです。こうしたシステムは、比較的早い段階で、社会実装できると考えています。そして将来的には、私たち自身のコネクトームができるわけです。あなたの考え、感情、記憶をディスク上に残すことができるのです。そして、自分が死んだ後も、コネクトームは生き続けます。それはある意味で、不死になるということです。

さらに、レーザービームでコネクトームを宇宙に飛ばしたらどうでしょう。近い将来、強力なレーザーも開発され、レーザーでコネクトームを宇宙に飛ばせば、1秒で皆さんの意識が月に辿り着き、20分経つと火星に行くことができるようになるはずです。別の世界や、遠い先の未来で、私たちは生きていくことができるようになるかも知れないのです。

> 「人間がAIとつながる社会」第二部 パネルディスカッションに続く

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