Column

未来創造会議から浮かびあがる注目のテーマ : 1

SOCIETY
地球社会・国家・地域の未来とは

変化に追い付かない社会の規範

林 千晶氏の写真

昔あった共同体は、自分の欲求ではなく、他人の必要性によって、自分の能力が引き出されていた。それが、個になっていくにつれて、能力を引き出されることが減り、ビジネスやお金で満たすという仕組みに変わってきたことが問題なのです。

ロフトワーク 代表取締役

林 千晶氏

ケヴィン・ケリー氏の写真

「我々は、どうありたいのか」。未来創造の最も大きなドライブは、この言葉に尽きます。これからAIが、人に替わって様々な仕事をこなすようになる。その時人間は、何をすれば良いのでしょうか。バイオテクノロジーを活用して、人類のどのような部分を最適化したいのでしょうか。そして、その能力を、何の役に立てるのでしょうか。哲学的に思えるかもしれませんが、こうした議論が未来創造のための大きなポイントで、可及的速やかに答えを出さなくてはならない、現実的な質問なのです。

「WIRED」誌 創刊編集長

ケヴィン・ケリー氏

「ホモサピエンス全史」で語られるように、人類史は、狩猟農耕の時代を始発駅としながら、農地の集約化が図られた農業革命、蒸気機関、電気、自動車に象徴される産業革命、コンピュータ、インターネットを生み出した情報革命、そしてAIやサイバーフィジカルに象徴される第4次産業革命、次世代バイオ・アグリ・ライフサイエンスの構築を目指す第5次産業革命を睨みながら、現在を迎えている。

そのそれぞれの発達段階において、文字、貨幣、印刷、メディア、インターネットなどの社会ツール、都市、国家、経済圏、そしてSNSなどの社会システム、宗教、人間中心主義、資本主義、消費主義などのルールや枠組みが台頭してきた。それらは、環境破壊、文化崩壊といった負の遺産を蓄積しながら、近代の機能的、合理的な「自動化社会」、エネルギーベストミックスに象徴される「最適化社会」を進化させてきた。では、その先にある 社会は何なのかを探ることが、今回会議の重要なミッションの一つである。

地域の知的資本を活用しながら、リージョナルなバリューチェーンを築く「自律化社会」へ向かうのか。地域の自然資本を尊重し、活用する「自然化社会」へ向かうのか。議論を重ねるなかで、その複数シナリオを構築し、その功罪を精査する作業が求められている。

そこでは、近代経済学、非主流派経済学、民俗学からのロジック構築が重要となろう。

未来社会仮説

地球の物理的限界に対する認識の広まりと、情報の民主化が原動力になり、物質的な豊かさを追求する人間中心の社会から、
心と体の豊かさ、快適さを求めつつ自然や社会との調和を目指す方向性へと変革することが予想されます。

出典 : Universal Design Intelligence.,Inc.

未来技術は、完璧な資本主義を実現するか

松尾 豊氏の写真

政治家を筆頭に、社会階層の上の人ほど動物的で、客観的な規範などない、強い方が良いのだ、と考えているように感じます。理想的、統一的な倫理規範がある、あって欲しいと思うのは、社会的動物である人間の幻想かも知れません。しかし、普遍的なものを求めたいという人間の性を見つめ続けることも大切です。

東京大学大学院 特任准教授

松尾 豊氏

完璧な資本主義とは、適正な配分が同時に成立するようなシステムだと思われる。それはもはや、国家という単位で考えることは難しく、AIの補助的な役割を含めて、次のガバメントの姿を考えるべき時代を迎えている。

社会は、ある種の理想を目指して進むのではなく、それぞれが競争しながら、快楽を得ながら、その都度形成されるものだと考えている。そこでは、差別もまた快楽になり得る。ネットによって、民主的な社会が構想されるだけでなく、ネットによってむしろ差別が拡大されることも意識しなければならない。大切なことは、「Nothing about us without us」。「私たち抜きに、私たちのことを決めるな」、というテーゼである。様々なマイノリティの権利がこれまで置いてきぼりにされてきた。当事者性の回復こそが、完璧な資本主義のための最も重要な論点であると提起したい。

そして、こうした価値観を共有した上で、次に技術の役割を考えていかなければならない。技術には、メッセージ性があり、社会を特定の方向に変化させる力がある。しかし、その技術といかに関わるか、上手にそれを活用するかは、また別の選択肢であることを意識しておく必要がある。民主主義を学ぶツールに使えるメディアも、民主主義を習うことを防ぐためにも使えるし、プロパガンダにも使える。ICT技術は、今までのような家族とか、共同体とか、ナショナリズム、そして完璧な資本主義といった、これまでの中心主義から解放されるためのツールとして使っていけるはずである。

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